公認会計士合格後のキャリア選択|監査法人 vs 税理士法人、どちらを選ぶべきか

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公認会計士試験に合格した後、多くの方が直面するのが「最初のキャリアをどこにするか」という問題です。

選択肢はいくつかありますが、合格者の大多数が選ぶのは監査法人税理士法人のどちらか。似ているようで仕事の性質はまったく異なり、その後のキャリアにも大きく影響します。

この記事では、両者のメリット・デメリットを具体的に比較し、「自分にはどちらが合うか」を考えるヒントをお伝えします。筆者自身が監査法人を経て税理士法人に転職した経験をもとに、現場のリアルも交えながら解説します。


合格後のキャリアの全体像

まず、公認会計士の主な就職先の選択肢を整理します。

キャリアパス主な特徴
監査法人法定監査が中心。Big4、準大手、中小に分かれる
税理士法人税務代理、記帳代行、国際税務、M&Aなど
FAS(財務アドバイザリー)M&A・企業価値評価・デューデリジェンス
事業会社経理・財務・経営企画・内部監査
独立・開業税理士業務との兼業が一般的

合格者のうち約7割が監査法人に就職するとされており、「とりあえず監査法人」が業界のスタンダードです。この記事では、最も多くの方が迷う**「監査法人 vs 税理士法人」**に絞って解説します。

※規模感によっても主な業務内容が異なる場合があります。一般的に大手事務所の方が業務が細分化される傾向にあるため特定分野の専門性が高まります。一方で中小事務所は専門性という点では大手には劣りますが、その分業務の幅は広いです。ただし、中小事務所でも分野特化型の事務所もありますので例外はあります。この辺りは今後説明できたらと思います。


なぜ多くの合格者が監査法人を選ぶのか

「特にやりたいことが決まっていないなら、まず監査法人」というのが業界の共通認識です。その理由を整理します。

① 公認会計士登録の要件を確実に満たせる

公認会計士として登録するためには、次の3つが必要です。

  • 実務経験3年以上(業務補助等)
  • 実務補習所の単位取得
  • 修了考査の合格

上場企業の監査をする監査法人に勤務していれば、実務経験の要件は基本的に満たせます。一方、それ以外の職場(事業会社・税理士法人など)を選ぶ場合は要件の確認が必要です。

また、実務補習所の費用(数十万円)や公認会計士登録費用、登録後の年会費は監査法人なら法人負担が一般的ですが、それ以外の職場(事業会社・税理士法人など)の場合は確認が必要です。事業会社は負担してくれないケースが多いです。

② 多業種の知識と経験が積める

監査業務では、担当するクライアントの業種・規模が定期的に変わります。製造業・不動産・IT・金融など、様々な業種の内部を深く知ることができます。

税務調査官として企業の内側を見てきた経験と重なりますが、監査はコンサルや税務と違い、内部統制・棚卸立会・開示書類のチェックまで業務範囲が広く、会社全体への理解が深まります。

③ 人脈が形成される

監査法人は公認会計士が最も多く集まる職場です。多様なキャリアの先輩・同期と出会え、その後のキャリア形成の参考になります。独立した会計士が「監査法人時代の先輩から仕事を紹介してもらっている」という話は珍しくありません。

④ 修了考査との相性

修了考査には「監査実務」の科目があります。監査法人で日々の業務として監査をやっていれば、この科目は実務に基づいて理解できます。


監査法人のメリット・デメリット

メリット

① 公認会計士登録の要件を確実に満たせる

② 多業種の知識と経験が積める

③ 人脈が形成される

上記は記載済のため説明を割愛します。

④ 年収水準が高い

スタッフで年収500万円〜750万円、シニアで700〜1,000万円、マネージャーで900〜1,200万円超と、士業の中でも高い水準です。

※各監査法人の求人情報や業界平均をもとにした目安です

デメリット

① 繁忙期の負荷が大きい

3月決算企業の監査が集中する4〜5月は、月80〜100時間の残業になるケースもあります。プライベートの時間を確保しにくい時期が毎年やってきます。特に大手監査法人はその傾向はあります。

※中小監査法人の場合は残業はあまり多くありません。繁忙期でも50時間以下、繁忙期以外はほぼ残業なしのところもあります。この点は法人の選び方により調整することは可能かと思います。

② 業務がルーティン化しやすい

同じような監査手続きを繰り返す性質上、数年経つと飽きを感じる人もいます。自分の裁量で新しい価値を生み出す機会は少なく、入所から5〜10年で約半数が離職するとされています。

③ 0→1の仕事は少ない

できあがったものをチェックする業務が中心のため、提案・創造といった要素は限られます。「手を動かした結果がクライアントに直接届く」感覚は得にくい環境です。


💬 著者コメント

私は監査法人を経てから税理士法人に転職しました。今振り返ると、監査法人でのキャリアは「後の選択肢を広げる意味で正解だった」と感じています。ただ正直に言うと、年収は監査法人に残っていた方が高かったです。税理士法人に転職したことでやりがいは増しましたが、収入的なトレードオフがあることは事前に知っておいてほしい現実です。もちろんその後の活躍次第で収入アップは見込めます。


税理士法人のメリット・デメリット

メリット

① 独立に直結する実務スキルが身につく

独立開業している公認会計士の多くは税務を主業務にしています。早い段階から税務の実務を積むことは、将来の独立に向けて強力なアドバンテージになります。税務の専門性は監査法人にいても深めることはできません。

② コンサル要素が多く、仕事のやりがいがある

監査は「できあがったものをチェックする」業務が中心ですが、税理士法人はクライアントへの改善提案・節税提案・事業承継のサポートなど、0→1の業務が多くあります。「手を動かした結果がクライアントの喜びに直結する」感覚は、監査とはまったく異なります。

③ 顧客目線の意識が鍛えられる

税理士法人は、従業員一人ひとりの生産性が売上に直結します。そのためクライアントの満足を追求する意識が自然と鍛えられます。監査法人時代も丁寧な対応は心がけていましたが、顧客に対する意識の質は全然違うと感じました。

デメリット

① 監査非常勤ができない(独立後の収入リスク)

独立開業した公認会計士は、顧客が付くまでの収入を「監査非常勤」で補うケースが多く、単価も高いため安定した収入源になります。しかしこの監査非常勤には、監査法人での実務経験(一般的に3〜5年、インチャージ(主査)経験が必要なケースも)が求められます。税理士法人からの独立の場合、このルートが使いにくくなります。

② 年収水準は監査法人より低め

平均年収の目安
Big4監査法人(スタッフ〜シニア)500〜850万円
Big4税理士法人(スタッフ〜シニア)450〜800万円
中小税理士法人400〜750万円

Big4同士であればあまり差はありませんが、中小の税理士法人・会計事務所は監査法人より低めのことがほとんどです。

③ 繁忙期は忙しい法人も

上場企業クライアントを多く抱える法人やBPO(記帳代行・給与計算)業務を行う法人は、月次、四半期といったタイミングで業務の締切が多く忙しい以降にあると思います。人の入れ替わりが多いのも業界の特徴です。


💬 著者コメント

税理士法人に来て最初に驚いたのは、スタッフ全員の「もう一押し」する意識の高さです。監査では「監査意見を出す」ことがゴールですが、税理士法人では「クライアントにどれだけプラスを提供できるか」が大事。仕事の充実感は監査法人時代より高いと感じています。


どちらを選ぶべきか

迷っているなら、まず監査法人

「やりたいことが決まっていない」「将来の選択肢を広げたい」という方には、監査法人からスタートすることを勧めます。登録要件を確実に満たせること、年収水準、その後の転職市場での評価など、あらゆる面でスタート地点として優れています。

税理士法人を最初に選んでもいいケース

  • 将来的に独立・開業を考えており、税務の実務をできるだけ早く積みたい
  • 年収・環境のギャップが小さい税理士法人への就職が決まっている
  • 顧客と近い距離で仕事をしたい

判断の基準まとめ

優先したいことおすすめ
選択肢を広く残しておきたい監査法人
年収を最大化したい(短期)監査法人
将来の独立・税務特化税理士法人
クライアントワークのやりがい税理士法人
公認会計士登録を確実に済ませたい監査法人

💬 著者コメント

「監査法人か税理士法人か」という問いへの私の答えは、「迷っているなら監査法人、やりたいことが明確なら税理士法人」 です。

監査法人を経由してから税理士法人や独立に進む王道ルートは、後悔が少ないと感じています。私自身そのルートを歩み、年収面では監査法人に残った方がよかったと思う部分はありますが、税理士法人で得た経験や顧客との関係は、お金に換えられない財産です。合格したばかりの段階で答えを出す必要はありません。いったん監査法人に就職し、その後自分に合うキャリアを見つければいいと思います。


まとめ|監査法人vs税理士法人、迷ったときの判断基準

  • 合格者の約7割が監査法人からキャリアをスタートする
  • 監査法人の強み:登録要件・年収・人脈・多業種経験・選択肢の広さ
  • 税理士法人の強み:税務専門性・独立直結スキル・顧客ワークのやりがい
  • 監査法人のリスク:繁忙期の激務・ルーティン化
  • 税理士法人のリスク:監査非常勤が使いにくい・年収が低めになりやすい
  • 迷っているなら監査法人からスタートが無難。目標が明確なら税理士法人もあり

公認会計士試験の概要については、以下の記事もあわせてご覧ください。

→ 公認会計士試験の概要|試験科目・合格率・勉強時間をわかりやすく解説

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