はじめに
公認会計士試験の勉強を始めると、情報が多すぎて迷いやすくなります。
「テキストは何周すればいい?」「講義は繰り返し見た方がいい?」「問題集は全部解かないとダメ?」
こうした疑問に対して、この記事では一つの答えを示します。
「やることを絞り、決めた教材を繰り返す」
これが、時間の限られた社会人受験生にとって最も現実的な合格戦略です。以下では、私がCPA会計学院の教材を使って実践していた勉強の進め方を具体的に紹介します。
⚠️ この記事でお伝えする勉強法について
予備校の講師は、個別問題集の活用など、より網羅的な勉強法を指示してくれます。本来であれば、その指示に従うのが一番です。
ただし、社会人はすべてをこなそうとするとパンクするケースがあります。この記事でご紹介しているのは、私が時間の制約の中で**実際に合格できた「最低限の教材と方法」**です。
「どこまでやるべきか」は個人の状況によって異なります。余裕がある方はより多くの教材に取り組むことも選択肢ですし、迷ったときは担当講師に相談してみてください。
大前提:まず「理解」、その後に「記憶定着」
勉強で最初につまずくのは、「覚えること」を先にしようとするパターンです。
テキストを読んで内容を暗記しようとしたり、問題の解き方を丸暗記しようとする方法です。これは効率が悪く、応用が効かないため、似た問題が出ても対応できません。
公認会計士試験で求められるのは、「なぜこの処理になるのか」を理解した上で問題を解く力です。
正しい順序はこうです。
- まず理解する(講義・テキストで概念・仕組みを把握する)
- 理解できたらアウトプットで定着させる(例題・問題演習を繰り返す)
理解なしに暗記を進めると、少し形が変わった問題で途端に解けなくなります。反対に、仕組みを理解していれば、問題の形が変わっても対応できます。暗記はあくまで「理解した後の定着作業」です。
基本スタンス:やることを絞って深く
あれこれ手を出さない
市販のテキスト・他校の問題集・有名受験生のまとめノート……勉強法を調べると「あれもやった方がいい」という情報が次々と出てきます。
ただ、社会人にそんな時間はありません。私自身、働きながら子育てをしていたため、教材を選ぶ余裕も時間もありませんでした。
結論として、CPA会計学院の教材だけで十分です。
予備校のカリキュラムは合格に必要な内容が体系的に設計されています。教材を増やすより、手元の教材をやり込む方が確実に力がつきます。
※私はCPA会計学院の教材を使用していたため、その前提で記載しております。他の資格専門学校の教材を使用されている方も前提の考え方などは参考になると思います。
勉強の基本サイクル
- 講義を倍速で聞きながらテキストを加工する
- その日のうちに復習して理解を固める
- 例題・問題集で即アウトプット
- 答練を解いて理解の穴を確認する
- 例題・答練を試験直前まで繰り返し回転させる
このサイクルを科目ごとに回し続けることが、短答式・論文式を通じた基本的な学習の流れです。
講義の受け方:1回で理解する気持ちで集中する
倍速再生を活用する
CPA会計学院のWEB授業は倍速再生ができます。私は基本的に1.5〜2倍速で視聴していました。
慣れるまでは聞き取りにくく感じますが、すぐに慣れます。同じ時間でより多くの講義を消化できるため、スケジュールに余裕が生まれます。
講義は1回しか見ないつもりで聞く
「わからなかったらまた見ればいい」という気持ちで受講すると、集中力が下がります。
講義は1回しか見ないつもりで集中して聞くことが大切です。どうしても理解できない箇所があれば、そこだけ見直す。それ以外は繰り返し視聴しない。
講義を何度も見直す時間があれば、問題を1問でも多く解いた方が得点力は上がります。
受講後、できれば当日・遅くとも翌日に復習する
講義を受けたら、できれば当日中に、遅くとも翌日までに復習してください。
CPA会計学院の講義は1回あたり約3時間あります。倍速再生で圧縮できるとはいえ、当日中に復習まで終わらせるのが難しい日もあるでしょう。ただ、時間が空きすぎると内容を忘れてしまうため、翌日までには必ず確認することを習慣にしてください。
ここで理解が確認できていないまま先に進んでも、次の講義の内容がさらに積み重なるだけで、理解の穴が広がっていきます。「講義を受けた内容を翌日までに理解する」ことが、次に進む条件です。
復習の流れはシンプルです。
- 講義で学んだ内容をテキストで見直す
- 例題を解いてみる
- 解けなかった・迷った箇所だけ講義やテキストに戻る
例題が解けることで、「理解できている」という確認になります。解けなければ、そこに理解の穴があるサインです。
💬 著者コメント
講義を繰り返し見るのは、勉強した気になりやすい一方で、試験本番の点数にはつながりにくいと感じていました。「わかった気がする」状態と「問題が解ける」状態は全く別物です。私は講義を受けたその日に例題を解くようにしていました。解けなければ「理解が足りていない」とわかるので、テキストに戻る。この繰り返しが一番効率的でした。
テキストの使い方:情報を一元化する
テキストを加工しながら受講する
講義を受けながら、テキストに書き込みや付箋を加えていきます。
- 講師が強調したポイント
- 自分が理解しにくかった箇所
- 問題を解いて気づいた補足
こうした情報をすべてテキストに集約していくことで、テキストを見れば全部わかる状態に仕上げていきます。
後から「あのメモはどこに書いたっけ」と探す手間がなくなり、試験前の見直しも効率的になります。
コンパクトサマリーも都度加工する
CPA会計学院にはコンパクトサマリー(要点まとめ)があります。これを持ち歩き用の教材として都度加工していました。
テキストは分厚く持ち運びが大変ですが、コンパクトサマリーは通勤中・休憩中にサッと確認できます。テキストで理解した内容をコンパクトサマリーに反映させることで、スキマ時間の復習が効果的になります。
問題演習の考え方:全問回転させなくていい
回転教材を絞る
私が繰り返し使っていた教材は以下に絞っていました。
計算科目(財務会計論・管理会計論)
- テキスト
- 答練
- コンパクトサマリー
理論科目(監査論・企業法)
- テキスト
- 短答対策問題集
- 答練
- コンパクトサマリー
理論科目は問題を解いて理解が怪しいと感じたら、必ずテキストに戻って確認します。問題集だけをぐるぐる回すのではなく、テキストとの往復を意識することが大切です。
問題は「解ききる」こと。わからなかったら必ずテキストに戻る
答練も問題集も共通して守ってほしい原則があります。
問題を解いたら、納得して解けるまで終わりにしない。
正解した問題でも「なぜこの答えになるのか」が説明できない場合は、理解が曖昧なままです。間違えた問題はもちろん、自信を持って解けなかった問題は必ずテキストに戻って理解を深めてください。
「問題を解く→わからなければテキストに戻る→テキストで理解する→また問題を解く」
この往復が、知識を確実に自分のものにする唯一の方法です。問題を解いて答え合わせをするだけで終わらせてしまうのは、時間を使っているようで実力がついていない状態です。
3周目からは問題に強弱をつける
問題集を繰り返すとき、すべての問題を同じ力でこなす必要はありません。
3周目あたりからは、問題ごとに以下のように分類して取り組んでいました。
| 分類 | 対応 |
|---|---|
| 完璧に解ける問題 | 次回はスキップしてよい |
| 理解していて解けたが、次もできるか不安な問題 | 目だけで解く、ポイントや留意点をメモしておきそこだけ見る(問題により強弱をつける) |
| 間違えた・曖昧な問題 | 必ず解き直す |
全問を毎回こなそうとすると時間がかかりすぎます。重要な問題に時間を集中させることで、繰り返しの質が上がります。
💬 著者コメント
例題や問題集を「全部やらないといけない」と思っていた時期は、消化するのが目的になっていました。途中から「解き直しが必要な問題だけに絞る」と決めてからは、同じ時間でより多くの弱点を潰せるようになりました。完璧に解ける問題を何度も繰り返すのは時間のムダ。自分の弱点に時間を集中させることが、得点を伸ばす一番の近道です。
答練の使い方:回転教材として活用する
答練は予備校が定期的に実施する演習問題です。
答練の役割は2つあります。
- 今の自分のレベルを客観的に把握する
- 試験本番の形式(時間制限・問題形式)に慣れる
なぜ答練を回転教材に入れるのか
テキスト(例題)だけを回転教材にしていると、1回転するのに時間がかかりすぎるという問題があります。前回やった内容をすでに忘れかけたタイミングでようやく次の回転が来る、というサイクルになりやすいのです。
答練は複数の論点が1つにまとまっているため、テキストより短い時間で幅広い論点を復習できます。定期的に答練を回すことで、テキストだけでは維持しにくい記憶の定着が進みます。
テキスト(例題)で理解を深め、答練で記憶を定着させる。この2つを組み合わせることが、効率的な回転学習の核心でした。
答練のタイミングを自己判断でずらしたり、「まだ準備ができていないから」と後回しにすると、自分がどこでつまずいているかがわからないまま学習が進んでしまいます。
答練は予定どおり、なるべくタイムリーに解くことを最優先にしてください。
点数が低くても気にしないことです。答練は「試験本番ではない」ため、結果より「どこが取れなかったか」の分析の方がはるかに重要です。
未着手の答練を溜めない
答練が何回分も未着手のまま溜まっていくと、それ自体がプレッシャーになりモチベーションの低下につながります。
「準備ができてから解こう」と先送りにするより、準備が不十分でも予定どおり解く方が結果的にうまくいきます。解けなかった問題が弱点の発見につながるからです。溜めずに、そのつど消化していくことを心がけてください。
💬 著者コメント
答練の点数が悪いと「もっと準備してから解けばよかった」と思いがちですが、それは逆です。準備が不十分な状態で解くから弱点が見つかる。答練は自分の穴を発見するためのツールだと割り切って、結果に一喜一憂しないようにしていました。
「まず全範囲を1周」を優先する
復習のやりすぎで前に進めなくなる落とし穴
1つの単元を丁寧に復習してから次に進もうとすると、前に進めなくなります。
理想を言えば、次の単元に進む前に3回転させるくらいが望ましいとされています。しかし、時間に制約のある社会人がそれを実行しようとすると、単元を先に進めることがなかなかできない結果、終わりが見えなくなり、モチベーションが落ちる一方です。
実際、「復習を頑張りすぎた結果、全範囲を終わらせられないまま試験を迎えた」という受験生は少なくありません。
社会人の現実的な優先順位
講義を受けてその日に理解の確認をすること(例題を解く)はマストだと考えていました。ただ、その後の回転レベルについては、ある程度で見切りをつけて先に進む判断も必要です。
個人的には、まず全範囲を1周終わらせることを優先してよいと思っています。全体像がつかめてから、2周目以降で弱点を集中的に潰す方が、試験日までの時間を有効に使えます。
| 優先度 | やること |
|---|---|
| ① 最優先 | 講義受講→翌日までに理解確認(例題) |
| ② 優先 | 全範囲を1周終わらせる |
| ③ その後 | 弱点を絞って繰り返し回転 |
ただし「全く復習しない」はNG
全範囲を優先するといっても、まったく復習せずに先に進むのは逆効果です。
全範囲を終えて2周目に入ったとき、最初の方の内容がほぼ抜け落ちている状態では、2周目が実質「また1周目」になってしまいます。
1周目でやっておくべき最低限のことは以下の3つです。
- テキストに書き込む:講義で聞いたこと・最初の復習で気づいた点をテキストに書き込んでおく。2周目以降で見返したときに、すぐに思い出せる状態を作る
- コンパクトサマリーで内容に触れ続ける:持ち歩いてスキマ時間に確認することで、内容が完全にリセットされるのを防ぐ
- 答練を解く:答練は複数の論点をまとめて確認できるため、1周目の記憶を維持しながら先に進む手段としても有効
「復習に時間をかけすぎない」と「内容を完全に忘れない」のバランスを意識してください。
💬 著者コメント
「完璧に理解してから次に進む」というやり方は、学生時代の定期テスト勉強には向いていますが、公認会計士試験には向いていません。試験範囲が広すぎるため、1周目から完璧を目指すと必ず途中で止まります。私は「1周目は理解の確認だけ。細かい回転は後でいい」と割り切ってから、ようやく全範囲を見渡せるようになりました。ただ、テキストへの書き込みだけは丁寧にやっていました。2周目に入ったときに「このメモがあって助かった」と思う場面が何度もありました。
計算科目は毎日触れること
計算科目は、間隔が空くと感覚が鈍ります。スポーツと同じで、やめると体が動かなくなるイメージです。
そのため、計算科目は毎日必ず触れることを習慣にしてください。
| 時期 | 毎日触れるべき計算科目 |
|---|---|
| 短答式試験期 | 財務会計論・管理会計論 |
| 論文式試験期 | 財務会計論・管理会計論・租税法・経営学(計算部分) |
「今日は忙しくて無理」という日も、1〜2問だけでも解くことが大切です。完全にゼロにしないことが感覚の維持につながります。
逆に、理論科目(監査論・企業法)は数日空いても取り戻しやすいため、忙しい時期は計算科目を優先してください。
まとめ:教材を絞り、繰り返すことが最短ルート
この記事で紹介した勉強法を一言でまとめると、「絞って、繰り返す」です。
- まず理解する。暗記は「理解した後の定着作業」と割り切る
- 講義は1回集中して受ける。受けたその日に復習して理解を確認する
- テキストに情報を一元化し、コンパクトサマリーを持ち歩く
- 教材はCPA会計学院のものだけに絞る
- 問題は全問回転させず、弱点に集中する
- 答練はなるべくタイムリーに解く。溜めるとモチベーション低下につながる
- 答練はテキストと組み合わせて使い、記憶定着の手段として回転させる
- 1周目は完璧な復習より全範囲を終わらせることを優先。ただしテキストへの書き込みとコンパクトサマリー・答練で内容に触れ続ける
- 問題を解いたら必ず納得するまで確認し、わからなければテキストに戻る
- 計算科目は毎日必ず触れる(短答期:財務・管理、論文期:租税・経営学も追加)
社会人受験生に必要なのは「多くやること」ではなく「やることを絞り、それを深くやること」です。
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