大手監査法人と中小監査法人の違い|年収・働き方・キャリアを徹底比較

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公認会計士を目指す人の多くは、就職先としてまず「BIG4」を思い浮かべます。しかし監査法人には準大手・中小まで幅広い選択肢があり、規模によって働き方もキャリアもまったく違います。

公認会計士試験に合格した後、多くの人がまず直面するのが「どの監査法人に就職するか」という選択です。BIG4と呼ばれる大手だけでなく、準大手・中小まで含めると選択肢は多岐にわたります。

この記事では、大手・準大手・中小監査法人の違いを、年収・クライアント・働き方・離職率・キャリアパスという軸で整理します。


監査法人の分類

まず、監査法人がどう分類されているかを整理しておきます。

  • 大手(BIG4):EY新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツ、有限責任あずさ監査法人、PwC Japan有限責任監査法人の4法人
  • 準大手:太陽有限責任監査法人、三優監査法人、東陽監査法人、仰星監査法人の4法人
  • 中小:上記以外の監査法人

かつては准大手の一角にPwC京都監査法人もありましたが、2023年12月にPwCあらた有限責任監査法人と合併し、現在はBIG4の一角(PwC Japan)となっています。

なお、準大手の仰星監査法人と三優監査法人は、2027年7月1日付で合併し、新法人「監査法人BDO Japan」となることが発表されています(仰星監査法人を存続法人とする吸収合併)。この記事の分類は合併前時点のものである点にご留意ください。

ただし「中小監査法人」とひとくくりにしても、法人ごとの特色は非常に大きく異なります。IPO準備支援に特化した法人、自由度の高い社風を売りにする法人など、規模だけでは測れない個性があります。実際に検討する際は、規模による傾向だけでなく、各法人の強み・専門分野・社風まで確認することをおすすめします。


年収の違い

この記事の年収データは、公認会計士試験合格者(会計士補)として監査法人でキャリアをスタートした場合を前提としています。

1年目の年収は、額面月給30〜35万円前後、ボーナスを含めて約550万円前後が目安で、大手・準大手・中小による差はほとんどないとされています。差が本格的に開いてくるのは、シニアスタッフ以降です。

役職別の年収の目安(大手 vs 準大手・中小)

役職大手準大手・中小
スタッフ500〜700万円450〜600万円
シニアスタッフ700〜900万円600〜750万円
マネージャー800〜1,100万円700〜1,000万円
パートナー1,500万円〜1,200万円〜

準大手・中小は、全役職を通じて大手よりやや低めの水準です。ただし1年目は規模を問わずほぼ横並びなので、入所直後の年収差はほとんど気にしなくてよいと言えます。

なお、この差は必ずしも基本給の差だけで生じているわけではありません。スタッフクラスの基本給ベースでは、中小の方が高いケースも珍しくありません。総年収で大手が上回りやすいのは、繁忙期の残業代(前述の通り月60〜120時間分)が上乗せされることが大きな要因です。つまり、大手の高年収は「基本給の高さ」よりも「稼働時間の長さ」に支えられている面がある、と捉えることもできます。役職別のより詳しい年収推移や年代別の目安は、公認会計士の年収リアル|監査法人・事業会社・独立まで徹底比較で解説しています。

法人単位の平均年収としては、有限責任あずさ監査法人812万円、有限責任監査法人トーマツ798万円、EY新日本有限責任監査法人797万円、準大手の太陽有限責任監査法人747万円という水準が目安として挙げられていますが、これらは口コミサイトに投稿された自己申告データをもとにした平均であり、資格の有無や役職を問わず全従業員を対象にした数字です。試験合格者としての年収感覚は、上記の役職別の目安を参考にしてください。

💬 著者コメント

監査法人の年収は、単純に「規模が大きいほど高い」という話だけでもありません。準大手・中小は絶対額こそ大手にやや及びませんが、昇進スピードが早い分、同じ年齢・年次でより上の役職の年収に到達しやすいという側面もあります。絶対額と昇進スピード、両方を踏まえて考えることが重要です。


クライアントの特徴・経験できる業務の幅の違い

大手のクライアント

大手監査法人は、大企業・上場企業を中心に、特定の企業グループ系列の被監査会社を多数抱えているのが特徴です。例えば有限責任監査法人トーマツは三菱グループ系列、有限責任あずさ監査法人は三井・住友グループ系列の被監査会社を多く抱えているとされます。EY新日本有限責任監査法人は業種の幅が広いのが特徴です。

配属先によっては、超大企業の監査チームに入り、1年のほとんどを1社の監査に費やすケースもあります。この場合、深い専門知識は身につきますが、担当する企業数・業種の幅は限られがちです。ただし、これは大手全体で一律の話ではなく、中堅規模の企業を複数社担当するチームに配属されることもあり、配属先次第で経験の幅は変わってきます。

準大手・中小のクライアント

準大手・中小監査法人は、中堅企業・非上場企業を中心に、幅広い業種のクライアントを担当する傾向があります。年間で15社ほどのクライアントを訪問することも珍しくなく、「深く1社」の大手に対して「広く多数」の準大手・中小という違いがあります。


働き方・繁忙期の違い

大手監査法人は、繁忙期と閑散期の差が大きく、年間の月平均残業時間は40時間前後とされます。ただしこれはあくまで年間を通じた平均値で、閑散期はほぼ残業がない一方、3月決算企業が多いことから4〜5月が最大の繁忙期となり、四半期決算のある6月・9月・12月も業務が集中します。繁忙期の残業時間は月60〜120時間程度とされ、月100時間を超えるケースも珍しくありません。「平均40時間」という数字だけを見て負荷を軽く見積もらないよう注意してください。

準大手監査法人については、大手と同水準の負荷があるという情報もあれば、中小に近いワークライフバランスの良さを挙げる情報もあり、法人によって差が大きいのが実情です。太陽・三優・東陽・仰星と一口に言っても、規模・社風はそれぞれ異なります。

一方、中小監査法人は、ワークライフバランスを重視する法人が多く、定時で帰れることも珍しくないとされています。

ただし、これらはあくまで法人単位の傾向です。同じ法人内でも、どのクライアント・チームにアサインされるかによって繁忙度は大きく変わります。決算期が集中する業種を担当するチームは忙しくなりやすく、逆に閑散期に決算を迎えるクライアントを担当すれば負荷は軽くなります。法人選びだけでなく、配属後の実際の忙しさはアサイン次第という点は認識しておいてください。


副業のしやすさの違い

副業に対する姿勢も、規模によって大きく異なります。

大手(BIG4)は、独立性の維持を重視する観点から、副業を原則禁止としているのが一般的です。株式保有・顧問契約・コンサルティング業務・セミナー講師・執筆など、細かい規定で外部活動を制限している法人がほとんどです。

一方、準大手・中小監査法人は比較的自由な法人が多く、事前の届出など一定の手続きを条件に、副業や非常勤の案件を承認するケースもあります。講師業や執筆業など、専門性を活かした副業に取り組みやすいのは準大手・中小の方だと言えます。


離職率の違い

大手監査法人は離職率の高さが特徴で、10年以内に約半数以上が離職し、20年以内には9割以上が退職するという指摘もあるほどです。マネージャー・パートナーに昇格できるのは一握りで、多くの人がキャリアアップや新天地を求めて転職・独立していきます。

一方、中小監査法人の中には離職率1%以下という法人もあり、大手とは対照的に長期勤続がしやすい環境の法人も存在します。ただし、これは法人ごとの差が大きく、中小だからといって一律に定着率が高いとは限りません。


キャリアパス・昇進のしやすさの違い

大手のキャリアパス

大手監査法人は、特定領域を極めるスペシャリスト志向のキャリアパスが中心です。海外の提携先ネットワークを活かした海外勤務の機会も多く、グローバルなキャリアを志向する人には向いています。ただし、マネージャー・パートナーへの昇進競争は激しく、そこに到達できるのは一握りです。

準大手・中小のキャリアパス

準大手・中小監査法人は、幅広い業務をこなすマルチプレイヤー志向のキャリアパスが中心です。昇進スピードも早く、法人によってはシニア3年目・マネージャー5年目といったスピード感での昇格実績もあります。

大手から準大手・中小への転職という選択肢

大手で数年経験を積んだ後に準大手・中小へ転職するというキャリアパスも一般的です。主な理由はワークライフバランスの改善で、大手ほどの業務量を求められない環境で働きたいという動機が中心です。

このケースでは、大手でシニアクラス以上の経験を積んでいれば即戦力として評価されるため、年収が下がるどころか維持・上昇するケースも珍しくありません。準大手・中小は人手不足の法人も多く、大手経験者を高く評価する傾向があります。

💬 著者コメント

「大手の方がキャリアとして箔がつく」というイメージを持っている受験生は多いですが、実際にはどちらが優れているという話ではありません。深く1つの専門性を極めたいのか、早期に裁量を持って幅広い経験を積みたいのか、自分の志向によって合う環境はまったく変わります。


合格後の就職しやすさ(年齢の目安)

公認会計士試験の合格者平均年齢は例年24〜25歳前後で推移しており、大手・準大手はこの年齢層が採用の中心です。目安としては、大手・準大手は30代前半までは採用実績がありますが、30代後半になると難易度が上がります。

一方、中小監査法人は年齢よりも人柄・チームワークを重視する傾向があり、35歳前後までが現実的な目安とされます(会計事務所まで含めれば40歳まで採用の可能性があるとも言われます)。


どんな人が向いているか

大手監査法人が向いている人

  • 最新の監査技術・大規模監査の経験を積みたい人
  • 海外勤務・グローバルなキャリアを目指したい人
  • 特定分野のスペシャリストを目指したい人

準大手・中小監査法人が向いている人

  • ワークライフバランスを重視したい人
  • 早期の昇進・裁量拡大を望む人
  • 幅広い業種・案件の経験を積みたい人

監査法人後のキャリア目標で選び方が変わる

監査法人選びは、「その後どんなキャリアを歩みたいか」によっても変わってきます。

事業会社の経理・財務・IPO準備ポジションを目指す場合

大手監査法人での実務経験は、特に上場企業・IPO準備企業への転職においてブランド力を持ちます。求人によっては「大手監査法人での経験〇年以上」を応募条件として明記しているケースもあり、経理部長・財務部長・CFOといった経営に近いポジションほどこの傾向が強くなります。四半期決算・IFRS対応・内部統制構築など、大手監査法人での経験がそのまま即戦力として評価されやすいためです。

ここで重要なのは、単なるブランド力以上に「経験したクライアントの規模感が、将来行きたい事業会社の規模感と一致しているか」という点です。大手監査法人は大企業を中心に担当するため、そこで得た経験は大手事業会社が求める規模感とそのまま噛み合います。将来的に大手の事業会社で働きたいと考えているなら、BIG4など大手監査法人を選んでおくのが無難です。逆に、中堅・中小企業でのキャリアを見据えるなら、準大手・中小監査法人で近い規模感のクライアントを担当しておく方が、実務感覚として活きやすいでしょう。

FAS・M&Aアドバイザリーを目指す場合

BIG4は自社グループ内にアドバイザリー部門(FAS)を持っていることが多く、社内異動という形でM&A関連業務に移りやすい環境があります。準大手・中小からこの分野を目指す場合は、外部への転職というハードルを越える必要があります。

独立開業・税理士としてのキャリアを目指す場合

準大手・中小監査法人は、監査以外にも税務業務を扱っていることが多く、クライアントとの距離も近いため、独立を見据えた実務経験を積みやすい環境と言えます。

このように、監査法人選びは「今の働き方」だけでなく「その先に何を目指すか」も踏まえて考えることが大切です。


まとめ

大手・準大手・中小監査法人は、それぞれ異なる強みと働き方を持っています。

  • 年収:初任給はほぼ横並び、役職がつくと差が広がる
  • クライアント:大手は大企業を「深く1社」、準大手・中小は「広く多数」
  • 働き方:大手は繁忙期の負荷が大きい、中小はWLBが良好な傾向。準大手は法人によって差が大きい
  • 副業のしやすさ:大手は原則禁止、準大手・中小は届出制などで比較的自由
  • 離職率:大手は10年で5割以上・20年で9割以上が離職、中小は法人差が大きい
  • キャリアパス:大手はスペシャリスト志向、準大手・中小はマルチプレイヤー志向・早期昇進。大手経験者が準大手・中小へ移るケースも多く、年収を維持・上昇させながら転職できることもある
  • 就職しやすさ:大手・準大手は30代前半まで、中小は35歳前後まで

「大手か中小か」に優劣はありません。自分がどんな専門性・働き方・キャリアを望むかを整理したうえで、就職先を選ぶことが大切です。

監査法人でのキャリアについては、監査法人のリアル|働き方・年収・向き不向きを元勤務者が解説公認会計士合格後のキャリア選択|監査法人 vs 税理士法人、どちらを選ぶべきかも参考にしてください。


就職・転職の進め方

論文式試験合格後の定期採用で監査法人を目指す場合は、転職エージェントではなく、予備校主催の合同説明会・各監査法人の個別説明会・直接応募が基本ルートです。まずは合同説明会に参加し、大手・準大手・中小の説明を一度に聞き比べてみるのがおすすめです。法人ごとの雰囲気や特色の違いを実感しやすい機会になります。この流れについては公認会計士に合格したら次にやること①|監査法人就職活動の流れで詳しく解説しています。

一方、定期採用のタイミングを逃した場合や、大手から準大手・中小への転職など既卒・中途のタイミングで動く場合は、専門エージェントに相談するのが近道です。

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