監査法人のリアル|働き方・年収・向き不向きを元勤務者が解説

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公認会計士に合格したら、まず監査法人に就職する人がほとんどです。 でも「監査法人って実際どんなところ?」というリアルな情報は、意外と少ないのではないでしょうか。

この記事では、監査法人に勤務した経験を持つ筆者が、仕事内容・働き方・年収・向き不向きを実体験をもとに解説します。 監査法人への就職を検討している方や、キャリアの選択肢として気になっている方の参考になれば幸いです。


監査法人とは何をする場所か

監査法人とは、企業の財務諸表(決算書)が正しく作られているかを、公認会計士がチームでチェックする組織です。

上場企業は、株主や投資家に向けて財務諸表を公開する義務があります。しかし「会社が自分で作った数字を、自分で正しいと言う」だけでは信頼性がありません。そこで第三者である公認会計士が「この数字は適正です」と意見を表明する——それが会計監査です。

監査法人の業務の約9割はこの会計監査で占められています。


監査法人の種類

監査法人は大きく3つに分類されます。

種類代表例特徴
Big4(4大監査法人)EY新日本・有限責任あずさ・PwCあらた・デロイトトーマツ大企業・上場企業のクライアントが多い。規模が大きく組織的
準大手監査法人太陽・三優・東陽・仰星Big4と中小の中間。準大手ならではの裁量がある
中小監査法人全国に多数小規模でアットホーム。自由度が高い傾向

どの規模を選ぶかによって、働き方・年収・キャリアの方向性がかなり変わります。


監査法人の仕事内容

「監査法人の仕事=書類のチェック」というイメージを持つ方が多いですが、実際にはもっと多層的な業務が含まれます。

① 監査計画の立案

年度のはじめに、クライアント企業のビジネス環境や前期の検出事項をもとに「どこにリスクがあるか」を評価し、何に重点を置いて監査するかを計画します。

② 内部統制の評価

会社内部の業務プロセスを理解し、「財務報告に誤りが生まれにくい仕組みになっているか」を確認します。業務フロー図の作成やヒアリングが中心です。

③ 四半期レビュー

3ヶ月ごとの決算に対して実施するレビューです。証憑(領収書・請求書など)の確認よりも、経営者・担当者への質問と分析的手続が中心となる、比較的軽めな手続きです。

④ 実査・棚卸立会

期末日付近に実施します。現金・有価証券などの現物確認や、倉庫などに出向いて在庫の棚卸に立ち会うなど、フィールドワーク的な要素もあります。

⑤ 期末監査(メイン)

1年間の資産・負債・収益・費用が正しく計上されているかを確認する、年間で最も重要な作業です。証憑との突合だけでなく、経営者・財務担当者へのヒアリング、確認状の発送・回収、棚卸立会、数字の分析など、幅広い手続きを行います。

⑥ 経営者・監査役へのコミュニケーション

監査で気づいた点・リスクを経営者に伝えたり、監査役会で監査結果を報告したりする機会もあります。単なるチェックにとどまらず、会社の経営層と対話する場面もある点は、この仕事の醍醐味のひとつです。

⑦ 子会社・支社への往査

子会社や支社の往査に行くこともあります。海外子会社の場合は海外出張の機会もある仕事です。


1年間の業務スケジュール(3月決算企業の例)

日本の上場企業は3月決算が多いため、監査の年間サイクルは以下のようになります。

時期主な業務
7月監査計画の立案・クライアントとのキックオフ
7〜8月期中監査(内部統制評価など)
8月中旬夏休み(比較的取りやすい時期)
9月経営者とのディスカッション
10〜11月中間財務諸表のレビュー
11月〜3月期中監査(続行)
3月末実査・棚卸立会
4〜5月期末監査(最大繁忙期)
5月中旬監査役会への報告会
5〜6月有価証券報告書のチェック
6月定時株主総会

出典:日本公認会計士協会「監査業務の1年」


役職と年収の目安(Big4の場合)

監査法人の役職は、スタッフ→シニアスタッフ→マネージャー→シニアマネージャー→パートナーという順に昇進していきます。

役職目安の在籍年数年収の目安(Big4)
スタッフ1〜3年目500〜700万円
シニアスタッフ3〜5年目700〜900万円
マネージャー6〜9年目800〜1,100万円
シニアマネージャー10年目〜1,100〜1,500万円
パートナー15年目〜1,500万円〜

※繁忙期は残業代が加算されるため、その月の収入が普段の1.5倍程度になることもあります。

Big4と中小監査法人の違い

Big4は組織が大きく、キャリアパスが体系的に整っています。一方、中小監査法人は残業が少ない傾向があり、副業している会計士もいるなど、自由度が高いのが特徴です。年収は中小のほうがキャリア中期まで高い場合もあります。どちらが「正解」かはライフスタイルや目標によって異なります。

💬 著者コメント ネームバリューの点でBig4が魅力的に映りますが、中小監査法人の働き方は個人的にはかなりホワイトだと感じていました。副業している人がいるのも中小監査法人ならではの光景でした。


監査法人の働き方のリアル

フレックスタイム・短い所定労働時間

多くの監査法人は所定労働時間が7時間・フレックスタイム制を採用しています。仕事の性質上、クライアントの都合に合わせながらも、時間の使い方に柔軟性があります。

クライアント先常駐 or リモート

かつては「クライアント先に毎日常駐する」スタイルが一般的でしたが、最近はクライアントによってリモート対応も増えています。電子データの提供・オンラインミーティングの普及が背景にあります。

繁忙期と閑散期の差が大きい

4〜5月の期末監査シーズンは業界最大の繁忙期で、残業が増え、土曜出勤になることもあります。ただしそれ以外の時期はほとんど残業なしの月もあり、年間を通じてみると「激務」とは一概には言えません。

また、Big4と中小監査法人では繁忙期の忙しさにも差があります。担当するクライアントの規模や数にもよるため、一律に「監査法人は忙しい」とはいえないのが実情です。


監査法人に向いている人・向いていない人

向いている人

  • 大企業の財務・経営の仕組みに興味がある:多様な業界のクライアントに携わるため、幅広いビジネス知識が身につきます
  • 数字や細かい確認作業が苦にならない:監査は細部への注意力が問われる仕事です
  • ワークライフバランスを保ちながら高収入を目指したい:年収水準の高さとフレックス・リモート環境は両立しやすい

向いていない人

  • 自分で手を動かしてクライアントの課題を解決したい:監査は「意見を表明する」仕事であり、独立性を保つためにクライアントと一定の距離を置く必要があります。直接的に提案・実行する仕事とは異なります
  • 同じ業務サイクルの繰り返しに飽きやすい:監査は毎年ほぼ同じスケジュールで回るため、新しい刺激を求めるタイプには物足りなく感じることもあります。担当内容やチームが変わることはありますが、監査の性質上、同じチームで深くやっていく傾向にあると思います。
  • 幅広い実務経験を早期に積みたい:監査に特化した経験は深まりますが、他の会計・税務・コンサルの実務は別途積む必要があります。

💬 著者コメント 私が監査法人を離れた理由は、もっと幅広い経験を積みたいという気持ちからでした。監査をしていると、クライアントの経営や業務の「問題」が見えてくることもありますが、監査は独立性が求められるため、自分がそこに踏み込んで手を動かすことはできない。それがだんだんもどかしくなってきたんですよね。

また、年齢的なことも考えました。例えば事業会社への転職は一般的に30代が目安と言われています。FASであれば20代のうちの方がいいと思います。監査法人で安定した環境にいると、「いつでも転職できる」と思いながらそのまま時間が過ぎてしまうリスクがあります。私は30代で監査法人に入りましたので、早めに動くという判断は、正解だったと思っています。


まとめ:監査法人はホワイトで高収入、ただし「合う・合わない」がある

監査法人は、公認会計士のキャリアスタートとして非常に優れた選択肢です。

  • 高い年収水準(30代で1,000円超は現実的)
  • フレックス・リモートなど働きやすい環境
  • 大企業の財務・経営に広く触れられる経験

一方で、「独立性の壁」「業務サイクルの繰り返し」「キャリアの幅を広げにくい」という側面もあります。

監査法人を1つのキャリアのステップとして考えつつ、「その後どうしたいか」まで見据えて動くことが、公認会計士としての長期的なキャリア設計には重要です。


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