働きながら公認会計士を目指す方にとって、「どこで働くか」は合否を左右する重大な問題です。
公認会計士試験の合格に必要な勉強時間は3,500〜4,500時間以上と言われています。毎日2〜3時間以上の勉強時間を確保し続けなければ、合格は遠のきます。残業が多い職場では、それだけで勉強時間が削られてしまいます。
令和6年の公認会計士試験合格者のうち、社会人合格者は約13%。6〜7人に1人は働きながら合格しています。決して不可能ではありませんが、職場選びを間違えると、勉強との両立は一気に難しくなります。
この記事では、勉強との両立がしやすい職種を3つ取り上げ、それぞれのメリット・注意点・向く人を整理します。私も勉強と両立という観点から転職をした経験があります。
職場選びの4つのポイント
職種の解説に入る前に、勉強と両立できる職場に共通する条件を整理します。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| ①残業が少ない | 平均残業時間20時間以内が目安。繁忙期の状況も必ず確認する |
| ②試験勉強への理解がある | 試験前の有給取得・試験休暇制度があるか |
| ③業務内容と試験の親和性が高い | 仕事と勉強が相乗効果になると効率が上がる |
| ④通勤・働き方の柔軟性 | リモートワーク可・フレックス制度があると通勤時間を勉強に充てられる |
①企業経理
特徴
一般企業の経理部門で働きながら勉強するルートです。財務会計論(簿記・理論)の実務が仕事に直結するため、学習との相乗効果が期待できます。
メリット
- 残業が少ない企業を選べば、平日の勉強時間を確保しやすい
- 財務会計論の計算・理論が実務で定着しやすい
- 上場企業であれば監査対応を通じて公認会計士と関わる機会がある
- 内部統制の実態をイメージしながら勉強できる
- 年収が比較的安定している(400〜600万円程度)
⚠️ 注意点:会社選びが重要
企業経理は会社によって残業状況が大きく異なります。
| 企業タイプ | 残業の目安 | 両立のしやすさ |
|---|---|---|
| 大手・中堅の安定企業 | 少ない傾向 | ✅ 向いている |
| 中小企業(経理1〜2名体制) | 属人化しやすく多い場合あり | ⚠️ 要確認 |
| IPO準備企業 | 多い・突発的な業務が発生しやすい | ❌ 避けた方が無難 |
| スタートアップ | 非常に多い・業務範囲が広がりやすい | ❌ 避けた方が無難 |
IPO準備企業やスタートアップは経理担当者が少なく、制度整備・監査対応・資金調達など突発的な業務が重なりやすいです。「面白い経験が積める」という魅力はありますが、勉強時間の確保という観点では不向きです。
どんな人に向くか
- 安定した環境で長期的に勉強を続けたい方
- 財務会計論を実務と結びつけながら学びたい方
- 年収水準を一定程度維持したい方
②会計事務所・税理士法人
特徴
会計事務所や税理士法人で働きながら勉強するルートです。公認会計士試験の中でも「租税法」の学習が仕事に直結します。また、受験生が多い職場環境で、試験への理解が得やすいです。
メリット
- 租税法(法人税・所得税・消費税)の実務が試験勉強に直結
- 受験生が多く、試験前の有休取得や試験休暇制度が整っている事務所が多い
- 簿記一巡の手続きを実務で体感できる
- 公認会計士が所長の事務所では、合格後のキャリアのイメージが持ちやすい
⚠️ 注意点:繁忙期に注意
会計事務所・税理士法人には繁忙期(12月〜翌年5月)があります。この時期は残業や休日出勤が増える事務所も多く、確定申告・法人決算が重なる2〜3月は特に忙しくなります。
事務所選びの際は以下を必ず確認してください。
- 繁忙期の残業時間の実態(求人票の平均残業時間だけでなく、繁忙期の実態を聞く)
- 試験前の休暇取得の実績(「制度あり」でも実際に取れているかを確認)
- スタッフ数と業務量のバランス(少人数事務所ほど一人当たりの負荷が高い傾向)
どんな人に向くか
- 租税法を実務で固めたい方
- 公認会計士合格後も税務・会計分野でキャリアを築きたい方
- 受験仲間がいる環境で勉強のモチベーションを保ちたい方
③監査法人(トレーニー・アシスタント)
特徴
監査法人で働きながら勉強するルートです。「監査論」の実務が試験に直結し、予備校代の支援や試験休暇制度が整っている法人が多いです。合格後にそのまま正式採用されるルートも多く、就職活動の心配が少ない点も魅力です。
トレーニーとアシスタントの違い
「監査トレーニー」と「監査アシスタント」は似た言葉ですが、内容が異なります。
| 項目 | 監査トレーニー | 監査アシスタント |
|---|---|---|
| 対象 | 公認会計士受験生向けの専用制度 | 受験生でなくてもOK |
| 受験支援 | 予備校代支援・試験休暇あり(法人による) | 法人による |
| 業務内容 | 監査証明業務の補助(より深く関与) | 事務・データ整理が中心の場合あり |
| 採用条件 | 簿記2級以上〜短答式合格者 | 未経験可・簿記2級あると有利 |
| 年収目安 | 300〜500万円 | 300〜400万円 |
| 合格後の処遇 | 正社員昇格が一般的 | 別途採用手続きが必要な場合あり |
⚠️ 重要:実務要件を満たせるか事前に確認
公認会計士として登録するには、3年以上の「業務補助等」の実務経験が必要です(監査証明業務の補助)。
監査トレーニーはこの要件を満たす前提で採用されているケースがほとんどです。一方、監査アシスタントは業務内容が事務補助中心の場合、実務要件を満たせないケースがあります。
入社前に「業務補助等証明書を発行してもらえるか」を必ず確認してください。これを確認しないまま入社すると、合格後に実務要件が足りないという事態になりかねません。
Big4・準大手・中小の募集状況
| 法人規模 | 制度 | 倍率 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| EY新日本 | 監査トレーニー(定期募集) | 非常に高い | Big4で唯一定期的に募集 |
| あずさ・トーマツ・PwC | 監査アシスタント(不定期) | 高い | 「アシスタント」名義での募集 |
| 準大手・中小 | トレーニー or 正職員登用制度 | 1〜3倍程度 | 現実的な選択肢・非公開求人が多い |
Big4のトレーニー・アシスタントは倍率が非常に高く、若くポテンシャルのある方が採用される傾向があります。社会人受験生には準大手・中小監査法人の方が現実的な選択肢です。
中小監査法人の求人は公開されていないケースやもあるため、会計専門の転職エージェント経由で探すのが有効です。おすすめの転職エージェントはこちらです。


どんな人に向くか
- 監査論を実務と結びつけて学びたい方
- 合格後の就職先を早めに確保したい方
- 予備校代の支援を受けたい方
- 若い年次で、合格前から監査法人の文化に慣れておきたい方
3職種の比較まとめ
| 項目 | 企業経理 | 会計事務所・税理士法人 | 監査トレーニー・アシスタント |
|---|---|---|---|
| 残業 | 会社による(IPO・スタートアップは多い) | 繁忙期(12〜5月)は多い | 原則少ない |
| 年収 | 400〜600万円 | 300〜500万円 | 300〜500万円 |
| 試験との親和性 | 財務会計論 | 租税法 | 監査論 |
| 試験休暇 | 会社による | 多くの事務所で取得可能 | 制度あり(法人による) |
| 合格後の就職 | 別途就職活動が必要 | 別途就職活動が必要 | そのまま昇格が多い |
| 実務要件 | 原則カウントされない | 原則カウントされない | トレーニーは○・アシスタントは要確認 |
| 求人の探しやすさ | 多い | 多い | 少ない・非公開が多い |
転職エージェントの活用
会計・経理・監査法人の求人に強いエージェントを使うと、非公開求人へのアクセスや職場の残業実態などの情報が得やすくなります。
- ヒュープロ(士業・管理部門特化):監査法人トレーニー・会計事務所の求人が豊富
- MS-Japan(管理部門・士業特化):企業経理・会計事務所の求人に強い


まとめ
- 勉強との両立には残業の少なさ・試験への理解・業務内容との親和性が重要
- 企業経理は安定的だが、IPO準備・スタートアップは避けるのが無難
- 会計事務所・税理士法人は租税法に強くなれるが、繁忙期の実態を事前確認すること
- 監査トレーニー・アシスタントは合格後の就職が有利だが、倍率が高く・実務要件の確認が必須
- 中小監査法人のトレーニーは倍率が現実的で、非公開求人が多いため転職エージェントの活用が有効
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