公務員から公認会計士への転職|元公務員からのキャリアチェンジのリアル

活かす

「公務員を辞めて、何ができるんだろう」

そう思ったことがある公務員の方のためにこの記事を書きました。

私は地方公務員として7年、その後国税局に5年勤め、合計12年のキャリアを公務員として過ごしました。その後、公認会計士として今は民間企業で働いています。

公務員から公認会計士という道は、「転職」と「資格取得」の両方を経ることになります。

私がこの道を選んだ理由と、そこで感じたことは、今まさに同じ悩みを抱えている方の参考になると思っています。


第1章:なぜ公務員を目指したのか

正直に言うと「やりたいことが特になかった」

新卒のとき、やりたいことが明確にありませんでした。

そうした中でいろいろな分野の経験が積めて、公共性が高く社会的に貢献できる公務員を選びました。また、「仕事と家庭を両立できる環境で働きたい」と思っていたこともあり、当時の私には公務員はそのイメージに合っていました。

働き始めて気づいた「不安」

数年が経つと、周りの民間企業の友人・知人の姿が気になり始めました。

営業・語学・プロスポーツ・医療専門職——分野はさまざまでしたが、民間企業で活躍している方々には共通点がありました。それは「今の職場を辞めても通用するスキル」を持っていることです。

一方、自分はどうか。

「公務員を辞めたら、自分には何ができるんだろう」

公務員は異動が多く、良くも悪くも「ゼネラリスト」を育てる組織です。定年まで今の組織にいるなら問題はない。でも、安定性を職場に求めるのではなく、自分のスキルで安定したキャリアを歩みたい——そう考えるようになっていきました。

そのタイミングで、財務課への配属となり会計に触れ、簿記を学び、学生時代の同期で公認会計士になった友人から話を聞く中で「会計分野に特化したキャリアを歩む」という方向性が決まりました。


第2章:次のステップとして「国税局」を選んだ5つの理由

会計士を目指すと決めたとき、同時に「環境を変える必要がある」と判断しました。

現状の職場での残業時間と仕事量のままでは、合格レベルまで勉強する時間を積み上げるのが難しかったからです。そこで選んだのが国税局への転職(国税専門官)でした。

理由①:税務という専門性が得られる

公認会計士試験の論文式には「租税法」という科目があります。国税の実務に携わることで、ここが「実体験を持った得意科目」になると考えました。実際、論文式試験では税務科目が最も自信のある科目になりました。

理由②:内部研修が非常に充実している

国税専門官は採用後、税務大学校での研修があります。会計・税務の基礎を体系的に学べる環境は、公認会計士の勉強とも重なる部分が多く、一石二鳥でした。

理由③:勉強時間を確保できた

公務員は一般的に中枢の部署に行くほど忙しくなる傾向にあると思いますが、本庁勤務をしていた地方公務員時代と比較して、国税では税務署勤務からスタートということもあり残業時間はぐっと減りました。その後も多忙な部署は希望せず、一貫して比較的自分のペースで仕事ができる環境を維持しました。

※部署や時期によって業務量は変わります。税務調査の繁忙期など、忙しい時期があることは事実です。

理由④:給与水準が変わらない

国家公務員への転職のため、地方公務員からの給与水準はほぼ維持できました。家庭を持っていたため「勉強に専念するために収入を落とす」という選択をせずに済んだのは精神的にも大きな支えでした。

理由⑤:税理士試験の科目免除制度がある

国税専門官として一定年数勤務すると、税理士試験の科目が免除されます。当初から「将来的に税理士にはなれる」という見通しがあったことも、転職の後押しになりました。


第3章:国税専門官を目指す際の注意点

もし今、国税局への転職を検討している方がいれば、事前に知っておくべきことがあります。

公務員試験は「それなりに」勉強が必要

国税専門官は、人事院が実施する国家公務員採用試験(大卒程度・専門職) のひとつです。

私は学生時代に公務員試験を経験していたため、国税局への転職時の勉強は最低限で済みました。しかし、初学者の場合は別です。

試験の主な内容:

試験内容
教養試験一般知識・一般知能(数的処理・文章理解等)
専門択一会計学、商法、経済学、民法、憲法等
専門記述会計学または経済学等を選択
面接試験2次試験で実施

公務員予備校(LEC・TACなど)を活用する方が多く、準備期間は1年程度が目安です。

年齢制限に注意

通常の採用試験(A区分)には年齢制限があります。上限は30歳未満。大学卒業者・卒業見込みの方は年齢下限なし。詳細は人事院・国税庁の公式サイトでご確認ください。

そのため20代の早い段階から動くことが重要です。

国税専門官採用試験|国家公務員試験採用情報NAVI

社会人経験者向けの採用枠もある

30歳以上の方向けに、「社会人経験者採用選考」 が別途実施される場合があります。ただし採用数が少なく、倍率が高い傾向があります。

詳細は人事院・国税庁の公式サイトで毎年最新情報をご確認ください。

国税庁経験者採用試験(国税調査官級)|国家公務員試験採用情報NAVI

第4章:公務員と民間——実際に働いてわかった違い

公務員と民間、どちらが良い・悪いではありません。ただ、文化とマインドセットが根本的に異なることは、入る前に知っておいた方がよいことです。ざっくりまとめると以下のようなイメージです。


項目公務員民間企業
雇用の安定◎ リストラなし・倒産なし△ 業績次第でリスクあり
賞与・給与○ 景気に左右されにくい△〜◎ 賞与は成果次第で高くも低くもなる可能性あり
福利厚生◎ 共済組合など充実△〜○ 企業によって差が大きい
専門スキル△ 異動が多く軸が育ちにくい○ 専門職なら深く磨ける
売上・利益意識△ 育ちにくい環境◎ 必須スキルとして自然に身につく
キャリアの汎用性△ 民間転職時に評価されにくい○ スキル次第で転職市場で評価される

第5章:転職市場での公務員の評価——厳しい現実

これは正直に話します。

公務員から一般的な民間企業への転職は、簡単ではありません。

私が在職中に一度、転職サイトに登録したことがあります。エージェントから言われたのは「公務員から民間企業への転職は、一般的にハードルが高い」という話でした。

なぜ評価されにくいのか

民間の採用担当者が見ているのは、主に以下の3点です。

  1. 即戦力性:すぐに使えるスキルがあるか
  2. 成果の可視化:何を達成してきたか数字で示せるか
  3. ビジネス感覚:コスト・売上への意識があるか

公務員のキャリアは、これらを「言語化しにくい」という特徴があります。

「予算の執行管理をしていました」「窓口で市民の相談に対応していました」——どれも重要な仕事ですが、民間の採用現場では刺さりにくいのが現実です。

「スキル×資格」が突破口になった

では、私はどうしたか。

「公務員」としてではなく、「会計・税務の専門家」として転職市場に出る道を選びました。

国税専門官として税務調査・税務相談に携わり、そこに公認会計士という資格が加わることで、転職市場での評価は一変しました。「元公務員」という肩書きより、「元国税調査官の公認会計士」という肩書きの方が、会計・税務の世界では圧倒的に強みになります。

公務員の経験は、資格や専門性と組み合わせることで初めて転職市場での武器になる。

これが私の実感です。


おわりに

公務員を選んだことを、後悔していません。

7年の県庁経験も、5年の国税経験も、今の会計士としての仕事に直結しています。公務員として積んだ「コンプライアンス意識」「法的な思考」「行政との折衝経験」は、民間の会計士として働く上で確実に生きています。

ただ、一つだけ言えることがあります。

「定年まで今の職場にいればいい」と思うなら、それは立派な選択です。でも、もし「自分のスキルで勝負したい」と思うなら、早めに動いた方がいい。私自身、30代での転職でしたが、公認会計士という資格があったことで年齢のハンデを補うことができました。ただ、資格なしで公務員から民間へ転職しようとしていたら、かなり難しかったと思います。

転職市場では、年齢を重ねるほど選択肢は狭まります。「いつか動こう」ではなく、「今、何ができるか」を考え始めることが最初のステップです。

この記事が、そのきっかけになれば嬉しいです。

この記事のまとめ

  • 公務員のスキルは転職市場では「即戦力」として評価されにくい現実がある
  • 国税局への転職は「専門性・勉強環境・給与」の3点でメリットが大きかった
  • 公務員からのキャリアチェンジは、資格という軸を持つことで突破口が開ける
  • 転職市場での選択肢は年齢とともに狭まる。動くなら早い方がよい

あらた | 公認会計士・元国税専門官
元地方公務員・国税専門官として12年公務員キャリアを歩み、社会人・子育て中に公認会計士試験に合格。その後、監査法人、税理士法人等での勤務経験あり。

コメント

タイトルとURLをコピーしました