「公認会計士を目指したい」と思ったとき、多くの方が次に検索するのは「勉強法」や「予備校の選び方」です。
でも、本当に最初に確認すべきことは「自分は今この資格を目指すべきか」ではないでしょうか。
公認会計士は、弁護士・医師と並ぶ日本の三大国家資格です。それだけのリターンがある一方で、合格までのコストも相応に大きい。この記事では、社会人として受験を検討している方に、始める前に知っておくべき現実を正直にお伝えします。
まず現実の数字を知ってほしい
「難しい試験」とは聞いていても、具体的な数字を知らないまま勢いで始めてしまう方は少なくありません。まず3つの数字を確認してください。
合格までにかかる費用:80〜100万円以上
| 費用項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 予備校受講費(初学者向け) | 70〜90万円 |
| 受験料(1回19,500円×複数回分) | 数万円 |
| 合計目安 | 80〜100万円以上 |
予備校費用だけで70万円超。一発合格できればよいですが、複数年にわたって受験する場合は追加費用もかかります。総額80〜100万円以上が現実的な数字です。
合格までにかかる時間:社会人なら3年以上
合格に必要な総勉強時間は3,500〜5,000時間とされています。
| 1日の勉強時間 | 3,500時間達成まで(単純計算) |
|---|---|
| 2時間 | 約4.8年 |
| 3時間 | 約3.2年 |
| 4時間 | 約2.4年 |
ただし、この試験は反復による記憶の定着が合否を大きく左右します。1日2時間程度では1周するのに時間がかかりすぎて、前半の内容を忘れた頃に後半を学ぶという悪循環に陥りやすいです。社会人であっても、1日3時間(週20時間)以上の確保が現実的なラインと考えておくことをおすすめします。
独身の方など比較的自由のきく社会人の方であれば短期合格の可能性も十分あります。ただ、仕事の繁忙期、育児、体調不良、ライフイベントも重なることを考えると、社会人の平均的な合格年数は3年以上と見ておくのが現実的です。(あくまで私のように初学者からスタートした場合の話です。すでに受験経験や会計知識のある方はこの限りではありません。)
合格率:7〜10%(しかも相対評価)
最終合格率は近年7〜10%で推移しています。しかもこれは絶対評価ではなく相対評価です。自分が十分な実力をつけていても、周りの受験生のレベルが上がれば合格が遠のく可能性があります。
💬 著者コメント
私は思い立ってから合格まで6年かかりました。途中で一時撤退した期間も含まれますが、費用も時間も想定以上となりました。「こんなにかかるとは思っていなかった」というのが正直なところです。始める前にこの現実を知っていたら、もう少し戦略的に動けたと思います。それでも後悔はしていませんが、「現実を知った上で始める」ことの大切さは強く感じています。
こんな気持ちで始めると後悔しやすい
次のような動機で始めると、長い受験生活の途中で挫折するリスクが高まります。
- 「なんとなく会計が面白そうだから」:趣味でやるならいいですが、あくまで合格を目指すのであればそのモチベーションで3年以上は持ちません
- 「今の仕事が嫌だから資格でも取ろう」:現状逃避の動機は、勉強が辛くなったときに真っ先に消えます
- 「副業・独立に使えるかも」という軽い気持ち:費用対効果として見合わない可能性があります
- 「周りが受験するから」「予備校の説明会で背中を押されたから」:他人の勢いで始めた場合、自分の意志が薄い分だけ継続が難しくなります
「動機が不純だとダメ」ということではありません。ただ、80〜100万円以上・数年の時間をかけるに値する理由が自分の中にあるか、一度立ち止まって問いかけてみてください。
こういう人なら、進んでほしい
逆に、次のような状況・考えがある方は、ぜひ前向きに検討してほしいと思います。
- 会計・監査・税務の分野でキャリアを築く覚悟がある:合格後のキャリアイメージが具体的な人ほど、長期戦を乗り越えやすい
- 学生・育休中など、まとまった学習時間が確保できる:時間的余裕があれば短期合格も十分現実的
- 残業が少なく、家族の理解・協力が得られている:環境が整っている人は、社会人でも着実に進められる
- 簿記検定を通じて「会計が好き」と実感できた:後述しますが、これが最も確かなGOサインです
迷っているなら「まず簿記から始める」がおすすめ
「公認会計士を目指すかどうか迷っている」という方に、まず日商簿記3級から始めることをおすすめします。3級で会計の基礎に触れ、面白いと感じたら2級へ、さらに1級へとステップアップしていくのが自然な流れです。
簿記検定・公認会計士の難易度・費用比較
| 簿記3級 | 簿記2級 | 簿記1級 | 公認会計士 | |
|---|---|---|---|---|
| 合格率 | 約40〜50% | 約20% | 約10% | 約7〜10% |
| 必要勉強時間の目安 | 50〜100時間 | 200〜400時間 | 600〜800時間 | 3,500〜5,000時間 |
| 費用目安 | 0円〜18,000円程度 | 0円〜60,000円程度 | 0円〜23万円程度 | 80〜100万円以上 |
| 期間目安(社会人) | 1〜3ヶ月 | 3〜6ヶ月 | 6ヶ月〜1年 | 3年以上 |
出典:各資格予備校公表値・日本商工会議所
※簿記検定の費用については受験料は考慮しておりません。また、同じ資格予備校でもいろいろなコースがあるためあくまで目安です。詳細は各ホームページをご確認ください。
簿記はCPAラーニングやYouTubeなどの無料講座で合格も十分可能で費用をかけずに挑戦できます。紙のテキストや問題集を購入しても数千円程度から始められます。
有料講座を使う場合でも、スタディング等の格安通信講座なら3級は約4,000円・2級は約20,000円程度で受講できます。いずれにしても公認会計士の予備校費用(80〜100万円以上)と比べると、低コストで「自分に向いているか」を確かめられます。有料講座の場合はその分質問体制などのフォロー体制が整っている点が強みかと思います。
まず簿記検定に挑戦することで、次の2つが確かめられます。
① 会計の勉強が自分に合っているかどうか
簿記と公認会計士試験は出題範囲が一部重なっています。「簿記の勉強が楽しかった」「もっと深く学びたい」と思えたなら、公認会計士を本格的に目指すサインです。逆に「苦痛だった」なら、80〜100万円を投じる前に気づけた、大きな収穫です。
② 仕事と勉強を継続できるかどうか
数ヶ月間、仕事と並行しながら勉強を続けられたかどうかは、長期戦に耐えられるかの予行練習になります。
3級に合格して「楽しい」と感じたら2級へ。2級まで進んで「もっと深く学びたい」と感じたなら1級へ。そして「会計の世界で生きていく」という確信が持てたタイミングで、公認会計士の本格検討に進むという選択肢もあります。いきなり公認会計士講座に申し込む前に、まず日商簿記検定3級から試してみてください。
始める前に確認したい・環境チェックリスト
公認会計士の受験を本格検討する前に、以下の項目を確認してみてください。
時間の確保
- ☐ 平日に3時間以上の勉強時間が確保できる見通しがある
- ☐ 仕事の繁忙期でも月単位で勉強を続けられる
費用の準備
- ☐ 予備校費用等80〜100万円以上を準備できる(もしくは準備の見通しがある)
- ☐ 合格まで数年かかった場合の追加費用にも耐えられる
家庭・環境
- ☐ パートナー・家族に受験することを伝え、理解を得られている
- ☐ 今後2〜3年、職場環境が大きく変わらない見込みがある
動機・覚悟
- ☐ 「合格後にどんなキャリアを歩みたいか」が具体的にイメージできる
- ☐ 会計・監査・税務分野で長く働く意志がある
💬 著者コメント
私が最も後悔しているのは、「環境が整っていない時期に無理に続けようとしたこと」です。子育てと仕事が重なり、勉強できない日々が続くと焦りと罪悪感だけが積み重なります。一時撤退し、環境が整った後に再開してからの方がずっと効率よく進められました。チェックリストの項目が半分も満たせないなら、まず環境を整えることを優先してください。
決意が固まったら:次のステップへ
上記を確認した上で「それでも公認会計士を目指す」という気持ちが固まったなら、次は予備校選びです。
公認会計士試験は相対評価であるため、合格者の多い予備校を選ぶことには合理的な意味があります。予備校の選び方については、別記事で詳しく解説します。
まとめ
- 公認会計士試験は費用80〜100万円以上・社会人なら3年以上という長期プロジェクト
- 合格には1日3時間以上の学習を継続できる環境が現実的な最低ライン
- 「なんとなく」「現状逃避」の動機では長期戦を乗り越えるのは難しい
- 会計業界でのキャリアへの覚悟と、勉強できる環境の両方が揃っているかが判断基準
- 迷っているなら、まず簿記3級から始めて適性を確認するのが最もリスクが低い。3級→2級→1級と段階を踏んでから本格検討しても遅くない(すべて無料から挑戦できる)
- 環境チェックリストで半分以上クリアできてから本格検討しても遅くない


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